勤務先を60才未満で退職した場合、加入していた企業型DC(企業型確定拠出年金)から脱退することになりますが、確定拠出年金は原則60才まで受け取ることができないため、これまで積み立ててきた資産は、退職後の立場に応じて確定拠出年金の手続き(移換手続き)が必要になります。この手続きの期限は加入資格喪失日(退職の翌日)から6か月以内です。

 2018年に転籍後、新しい勤務先では私は用意されている年金制度の対象者ではなかったため、新たにiDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)の口座を開設し、企業型DCの資産をiDeCoへ移換しました。資産を移換するといっても、それぞれの制度で扱っている商品は異なるため、資産は一旦すべて現金化されることになります。現金として移換後は、iDeCo口座で用意されている商品(投資信託、定期預金、年金積立保険)をあらためて購入し、運用を行うことになります。

 iDeCoを取り扱っている金融機関は証券会社や銀行など数多くありますが、私はSBI証券に証券口座を開設していたため、馴染みのあるSBI証券にiDeCo口座を開設しました。手数料が比較的安いことも魅力でした。同社のiDeCo口座には、当時は64種類もの商品があり、商品の選択に迷いましたが、まずは国内株式、国際株式およびバランスの3つのカテゴリーの中から手数料の安い商品を基本として4商品を選んで運用を開始しました。

 また、iDeCoは毎月掛金を拠出しますので、私は上限の月額23,000円を、毎月払いに比べて手数料が節約になる半年払い(賞与支給がある6月と12月に設定)で拠出することにしました。もちろんこの拠出額は年末調整で所得から全額控除できるため、所得税や翌年の住民税を軽減することができます。

 運用対象として選択した商品は、「三井住友・DCつみたてNISA・日本株インデックスファンド」(国内株式)、「ひふみ年金」(国内株式)、「DCニッセイ外国株式インデックス」(国際株式)および「iFree8資産バランス」(バランス)の4種類です。このうち、ひふみ年金は、ネットなどでの評判は良かったのですが、運用成績が芳しくない時期が続いたため、途中ですべて他の3商品にスイッチングし、3種類のパッシブ型の商品で運用を継続することにしました。

 ところで、以前の勤務先には確定給付企業年金(DB)を残しており、65才から年金受給を開始することにしていました。ところが、ある日、以前の勤務先から手紙が届き、「法律改正(確定給付企業年金法の一部改正、2018年5月施行)に伴い、給付を据え置いている老齢年金について、年金の原資を脱退一時金相当額として他の年金制度へ移換することが新たに可能となったので、移換を希望する場合は期限までに申し出るように。」との知らせがありました。

 経緯がよくわからなかったため、ネットで法改正の内容を調べてみると、「脱退一時金相当額を移換できる者(中途脱退者)の拡大」という項目を見つけました。そこには、「従来は、老齢給付金の受給要件のうち期間要件を満たしている場合には脱退一時金相当額の移換はできませんでしたが、その方のうち老齢給付金の支給開始年齢に到達していない方は、脱退一時金相当額の移換が可能となりました。」との解説がありました。
 すでに60才未満で勤務先を退職していた私ですが、どうやら退職後1年以内であったため、この法改正の対象者となったようです。

 以前の勤務先からの手紙には、他の年金制度への移換の方法として5つの選択肢が提示されていましたが、その中に「個人型確定拠出年金の原資として国民年金基金連合会に移換する」というものがありました。つまり、DB資産の全額をiDeCo口座に移換することができるということです。

 DBは、勤務先が運用しますが、たいていは(資産運用には疎いと想像される)労務部門が担当していますので、運用効率を高めるというよりも、安全に運用することが最優先されています。以前の勤務先では、労務部門が大株主である某大手生命保険会社にDB資産をお任せで運用していたことも関係しているのか、直近の給付利率は1.5%と低いものでした。

 今後の物価上昇(日本銀行の「物価安定の目標」は2%)を考えれば、なんとも頼りない運用と感じていましたので、私はこの機会にDB資産をiDeCo口座に移換し、自分で運用してみることにしました。この決断の背景には、前投稿「確定拠出年金の運用(その1)」に記した企業型DCでの「ほったらかし投資」の成功体験があったことは言うまでもありません。

著者

還暦おじさん

サラリーマンとして55歳の誕生日を迎えた2018年に関連団体に転籍し、今年(2023年)還暦を迎えました。転籍退職金などを元手にネットで情報収集しながら資産を楽しく運用しています。

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