e-Taxを利用して確定申告を始めるにあたっては、まず所得税の仕組みについてよく理解しておく必要があります。
国税庁のホームページには、「所得税は、個人の所得に対してかかる税金で、1年間の全ての所得から所得控除を差し引いた残りの課税所得に税率を適用し税額を計算します。」と記載されており、「所得税及び復興特別所得税の申告納税額の計算の流れ」が次のような図で説明されています。
この図を見て内容が理解できる人は、すぐにe-Taxを始めても問題ないと思いますが、以下では、図中の言葉の意味もあやふやというサラリーマン向けに、私なりに解説させていただきます。特に、この図の左半分、つまり所得税額を算出するところまでをよく理解しておく必要があります。
まず、「収入金額」は、確定申告の対象とする年(1月1日~12月31日)に勤務先から支給された給料、賞与およびその他の手当を合計(「給与等」と言います。)した金額です。いわゆるサラリーマンの年収といわれるものです。
この収入金額から、必要経費を差し引いたものが「所得金額」です。収入と所得は、よく混同されることがありますが、同じものではありません。サラリーマンの場合は、自営業者などと異なり収入から差し引ける必要経費が認められませんが、その代わりに「給与所得控除」という仕組みが用意されています。
具体的には、収入金額から、収入金額に応じて定められる一定額を差し引いた金額が、所得金額(サラリーマンの場合は通常は収入が給与等に限定されていますので「給与所得金額」と言います。)になります。また、収入金額に応じて定められる一定額のことを「給与所得控除額」と言います。
給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じて増加するようになっていますが、収入金額が850万円を超えると一律195万円の上限に達します。例えば年収が1,000万円の場合、給与所得金額は、
1,000万円 - 195万円 = 805万円
と計算されます。
次に、この給与所得金額から所得控除額を差し引いて、課税所得金額を計算します。課税所得金額が大きくなればなるほど、所得税額は増加しますので、所得控除額を可能な限り大きくする(課税所得金額を可能な限り小さくする)ことで、所得税額を少なく、つまり節税することができます。
国税庁のホームーページには、「所得控除とは、控除の対象となる扶養親族が何人いるかなどの個人的な事情を加味して税負担を調整するもので、次の種類があります。」とあり、15種類の控除(雑損控除、医療費控除、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、寄附金控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除)が記載されています。
15種類の控除のうち、年末調整では、雑損控除、医療費控除および寄附金控除を除く12種類の控除を考慮したうえで、それまで支払った税金が再計算され、12月分の給料の支給と同時に所得税の還付を受けることができます。また、その年の源泉徴収票も交付されます。
したがって、サラリーマンの確定申告は、年末調整で適用されない3種類の控除、すなわち雑損控除、医療費控除および寄附金控除を適用する作業を行うために実施するものということになります。
雑損控除は、地震、火災、風水害などの災害によって、住宅や家財などに損害を受けたときに適用されるものなので、通常は該当しません。
医療費控除は、一定の額の医療費を支払ったときに適用されるもので、次の式により算出します。ただし、医療費には予防接種や人間ドックなどの費用は含まれないことに注意が必要です。
寄付金控除は、国や地方公共団体、特定の法人などに寄附をしたときに適用されるもので、ふるさと納税がこれにあたります。ただし、寄附金控除額は寄附金額から2千円を差し引いた額になります。
以上のようにして、確定申告では、年末調整では考慮されない所得控除について、それぞれ所得控除額を算出し、年末調整による所得控除額に加算して、改めて課税所得金額を算出し、これに所定の所得税率(課税所得金額に応じて税率が大きくなる)を乗じて、所得税額を確定することになります。
e-Taxによる確定申告では、パソコンなどから源泉徴収票に記載してある年末調整後の必要データを入力した後、医療費の金額(専用の入力フォームも用意されている)とふるさと納税の金額(証明書ごとに入力)を入力すれば、自動で所得税額(A)が計算され、年末調整後の所得税額(B)との差額(B-A)が還付金額となり、後日指定した銀行口座に還付金が振り込まれます。