所得税の税率は、所得が多くなるに従って段階的に高くなり、納税者がその支払能力に応じて公平に税を負担するしくみとなっています。これは「累進課税制度」と呼ばれています。
 具体的には課税所得金額に応じて次のように税率が決められています(課税所得金額が900万円以上の場合は、金額に応じて税率が更に33%、40%、45%と上昇していきます)。
         課税所得金額          税率     控除額
       1,000円 から 1,949,000円まで    5%        0円
    1,950,000円 から 3,299,000円まで    10%    97,500円
    3,300,000円 から 6,949,000円まで    20%    427,500円
    6,950,000円 から 8,999,000円まで    23%    636,000円

 例えば、課税所得金額が600万円の場合、税率は20%になりますが、600万円の全額に税率20%が適用されるわけではありません。195万円未満の部分には税率5%、195万円以上330万円未満の部分には税率10%、330万円以上600万円までの部分に税率20%が適用されます。
 したがって、所得税額は、
   195万円 × 5% + (330万円-195万円)× 10% +(600万円-330万円)× 20%
   = 77.25万円
と計算できます。

 上の表の控除額は、この計算を簡便に実施するために設けられているものです。先ほどの式を次のように変形してみます。
    195万円 × 5% + (330万円-195万円)× 10% + 600万円 × 20% - 330万円 × 20%
   = 600万円 × 20% + 195万円 × 5% +(330万円-195万円)× 10% - 330万円 × 20%
 この式において課税所得金額(この場合は600万円)は第1項(600万円 × 20%)のみに影響し、第2項以降には関係がないので、第2項以降を計算してみると、
    195万円 × 5% +(330万円-195万円)× 10% - 330万円 × 20%
    = -42.75万円
となり、この値の符号を変えたものが控除額になります。

 したがって、この控除額を利用すれば、所得税額は、
   600万円 × 20% - 42.75万円 = 77.25万円
のように掛け算と引き算を1回ずつ行うことで簡単に算出できるようになります。

 この金額(772,500円)に復興特別所得税(原則として所得税額の2.1%、令和19年まで)を加えたもの
   772,500円 × 1.021 = 788,722.5円
から、1円未満の端数金額を切り捨てた金額(788,722円)が実際に所得税として納付する金額になります。

 これまで、給与等に関する確定申告について説明してきましたが、株式等(株式、投資信託、公社債など)の譲渡益がある場合(株式等を買値より高い価格で売却できた場合)は原則として確定申告が必要となります。

 株式等の譲渡益に係る所得税額(住民税額)は次のように計算します。
   譲渡価額 -(取得費+委託手数料等)= 譲渡益
   譲渡益 × 所得税率15%(ほかに住民税率5%)= 所得税額(住民税額)
 なお、確定申告や源泉徴収の際には、所得税のほかに復興特別所得税(原則として所得税額の2.1%)がかかります。

 また、株式等の譲渡損がある場合、確定申告により、その年分の配当等と「損益通算」することができます。損益通算してもなお控除しきれない損失の金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告により株式等の譲渡益及び配当等から「繰越控除」することができます。

 証券会社に「特定口座」を開設し「源泉徴収あり」を選択して取引していれば、上記の繰越控除する場合を除き、確定申告は不要となります。しかし、この場合であっても、複数の証券会社の特定口座間で「損益通算」を行う場合(例えばA証券では譲渡益が出たが、B証券では譲渡損が出た場合など)は、確定申告すれば特定口座で源泉徴収された所得税の一部について還付を受けることが出来ます。

 また、米国株や米国ETFを特定口座で保有している場合、その配当金については、米国で原則10%の所得税が徴収された後、さらに徴収後の金額から国内で所得税が徴収されているため、所得税が二重に課税されています。確定申告すれば、この二重課税を調整するために一定額を所得税から差し引くことができる「外国税額控除」の適用を受けることができます。
 なお、米国では、米国株や米国ETFの譲渡益には課税されません。

 一方、米国株や米国ETFをNISA口座で保有している場合、NISA口座で受領する配当金はそもそも国内非課税であり、所得税は二重課税ではないため、外国税額控除の適用は受けられません。そのため、NISA口座で保有する米国株や米国ETFの配当金には米国で原則10%の所得税が課税されたままになります。

 

 

 

著者

還暦おじさん

サラリーマンとして55歳の誕生日を迎えた2018年に関連団体に転籍し、今年(2023年)還暦を迎えました。転籍退職金などを元手にネットで情報収集しながら資産を楽しく運用しています。

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