あけましておめでとうございます。
元旦の本日は「iDeCo受給方法の考察(その2)」をお届けします。
SBIベネフィット・システムズ株式会社(SBI証券iDeCoの記録関連運営管理機関)が作成している「確定拠出年金給付の手引き」(以下「給付の手引き」と呼ぶ)には、「(老齢一時金の課税計算について)前年以前19年内に他の支払者から支払われた退職手当等があり、その退職手当等に係る勤続期間が老齢一時金の勤続期間(あるいは「通算勤続期間」)との重複期間がある場合の退職所得控除額は、老齢一時金の勤続期間(あるいは「通算勤続期間」)を基に計算される退職所得控除額から重複期間を基に計算した退職所得控除額を差し引いて、本年分として使用できる退職所得控除額を算出します。」との記載があります。
このことについて、私のケースに当てはめてわかりやすく説明すると次のようになります。
まず、退職手当(退職金)の退職所得控除額は次のように計算します。
以前の勤務先(勤続年数が20年超) 70万円 × (勤続年数 ー 20年)+ 800万円
現在の勤務先(勤続年数が20年以下) 40万円 × 勤続年数
現在の勤務先は勤続年数が10年になる予定ですので、退職金を受領する場合、
40万円 × 10年 = 400万円
が退職所得控除額となります。
iDeCoの老齢給付金の通算勤続期間は、以前の勤務先に就職した時から老齢給付金の受給を開始する時までであり、この期間から企業型DCからiDeCoに資産を移換するのに要した期間、すなわち掛金の拠出をしていなかった期間(2カ月間)を差し引いた期間になります。
iDeCoの老齢給付金の通算勤続期間においては、現在の勤務先に勤務している期間も勤続年数が継続しているものとされるので、現在の勤務先を退職後、翌年に老齢一時金を受給する場合は、
(70万円 ー 40万円)× 10年 =300万円
が退職所得控除額として利用できることになります。
また、給付の手引きには、「(老齢年金受給開始後の一時金への変更について)加入されている年金の規約またはプランで認められている場合、給付対象月が開始された月(年金開始月)から起算して5年を経過後は、お客様が請求を行うことで、年金資産残金を一括で受け取ることができます(確定年金受給者は対象となりません)。当該一時金は税制上、退職所得として取り扱われます。」との記載があります。
この場合の勤続年数は、iDeCoの老齢給付金の受給を開始してから、年金資産残金を一括で受給する時までになり、前述のiDeCoの老齢給付金の通算勤続期間の考え方によれば、年金資産残金を一括で受給する場合に適用できる退職所得控除額は 、
70万円 × 受給年数
と計算できます。
老齢給付金の受給方法として「併給」を選択すれば、老齢年金を受給しつつ、老齢年金受給の前後で2度にわたり退職所得として老齢一時金を受給できるため、iDeCoの老齢給付金を年金として10年間受給する場合であっても、毎年の老齢年金受給額がそれなりに大きくなるとき(公的年金等控除額やその他の控除額を超過し、所得税額が大きくなるとき)は有利になります。
具体的には、まず年金資産の一部(資産額のx%)を一時金として受給し、退職所得(退職所得控除額は300万円)として所得税の源泉徴収を受けます。残りの資産は毎年年金として受給し、公的年金等控除やその他の控除(国民健康保険料、年間10万円超の医療費、ふるさと納税など)を適用のうえ、確定申告により納付する(あるいは還付される)所得税額を確定します。年金受給開始からy年後に年金資産残金を一括してして受給し、再び退職所得(退職所得控除額は70万円×y)として所得税の源泉徴収を受けるということになります。
つまり、iDeCoの老齢給付金の有利な受給方法は、老齢年金受給期間(最大10年間)の所得税額の合計(T円)が最小となるようなxとy(ただしy>5)を求める問題として整理できます。