iDeCoの老齢給付金を最大10年をかけて有利に受給する方法を考えました。
具体的には、受給方法として「併給」(一部を一時金として受給し、残りを年金として受給する方法)を選択し、まず年金資産の一部(資産額のx%)を一時金として受給します。残りの資産は年金として受給を開始し、受給開始からy(ただしy>5)年後に年金資産残金を一括受給するというものです。
次は、このiDeCoの老齢給付金にかかる最大10年間の所得税額の合計(T円)が最小となるようなxとyを求めます。
「SBI証券 個人型確定拠出年金に関する説明書」(2023年4月)には、老齢給付金の受給方法として併給を選択する場合、「一時金の割合はご資産に対して10% ~ 80%まで10%刻みで指定できます。」との記載がありますので、xは、
x = 10、20、30、40、50、60、70、80
の8通りの候補中から選択することになります。
また、yは、年金を年1回受給する場合、
y = 6、7、8、9
の4通り(年2回受給する場合は、5.5、6.5、7.5、8.5、9.5が加わり9通り)の候補中から選択することになります。
xとy組み合わせは、全部で32通り(年2回受給する場合は72通り)ありますので、この32パターンについて、一時金受給(退職所得)にかかる所得税、年金受給にかかる所得税(y年分)、年金資産残金一括受給(退職所得)にかかる所得税を計算し、それらを合算してTを計算します。
T = 一時金受給の源泉徴収税額 + 年金受給の源泉徴収税額 (1年間)× y
+ 年金資産残金一括受給の源泉徴収税額
32パターンの計算結果の中で、Tが最小となるパターン(xとyの組み合わせ)が最適解ということになります。
まず、一時金受給および年金資産残金一括受給にかかる所得税は、次のように計算します。
退職金の場合と同じく、一時金受給および年金資産残金一括受給の課税退職所得金額は、
課税退職所得金額 =(支払金額ー退職所得控除額)× 1/2
の算式により計算します。なお、一般的に「退職金にかかる税金は優遇されている」と言われていますが、それは退職所得控除額が大きいことに加え、控除額を差し引いた後の所得が1/2に圧縮できるところにあります。
源泉徴収税額は、所得税の算式により計算します。例えば、課税退職所得金額が195万円超 ~ 330万円以下の場合、源泉徴収税額は、
源泉徴収税額 = (課税退職所得金額 × 10% ー 97,500円)× 102.1%
により求められます。
次に、年金受給にかかる所得税(1年間)は、次のように計算します。
年金は給与所得ではなく雑所得なので、公的年金等に係る雑所得の計算方法に従い、雑所得の金額を計算します。例えば、公的年金等に係る雑所得以外の所得にかかる合計所得金額が1,000万円以下で、65歳以上で公的年金等の収入金額の合計が330万円以上 ~ 410万円未満の場合、公的年金等に係る雑所得の金額は、
雑所得の金額 = 公的年金等の収入金額の合計額 × 75% ー 275,000円
の算式により計算します。
年金受給中は他の収入はないものとして、課税所得金額を、
課税所得金額 = 雑所得の金額 ー (基礎控除額48万円 + 国民健康保険料控除額 ほか)
により算出します。
源泉徴収税額はこの課税所得金額に基づき、一時金受給および年金資産残金一括受給の場合と同じく所得税の算式により計算します。 ただし、国民健康保険料は年金収入額によって変動することに留意する必要があります。